−芸術祭関係資料−

<受賞への道程>  

平成6年度(第49回)「芸術祭総覧」(文化庁芸術祭執行委員会編)から抜粋
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[芸術祭授賞理由]

演芸部門 柳貴家正楽の会

地域に根差した水戸大神楽の伝統ある儀礼の壮厳さと、日ごろの修練に支えられた至難の曲芸を楽しく破綻なく見せた。特に、取得困難な古典曲芸に挑む正楽親子の精進ぶりがさわやかで、伝統芸の継承に明るい灯をともした。

[芸術祭賞各部門授賞選考経過]

演芸部門

毎年の如く「演芸部門」には落語があり、講談、浪曲、マジック、曲芸、民謡、舞踊、 ミュージカル、大神楽、踊り芸……など、種々多岐にわたり、各審査員はその採点に頭を悩ませているのだが、本年もやはり同様で、内訳は落語9、講談4、浪曲1、マジック1、大神楽(里神楽を含む)3、語り芸2、踊り芸3、吟詠ミュージカル1、民謡2、小唄1……という計27公演であった。

選考に当たっては、優、秀、可の3段評価のリストをあらかじめ各人で用意、第1次審査として一つでも秀の入ったものをまず17公演選出。第2次審査で更に検討して8公演にしぼった。

第3次審査では全員一致ですでに第1次を通過していた「上方噺はめものの世界・染丸の会」(寄席囃子の実演と“軽業講釈”“電話の散財”“浮かれ屑より”)の話芸と成果に対してまず決定。続いて「水戸大神楽・柳貴家正楽の会」(“獅子舞”“鍾馗舞”“縁起尽し一曲芸今昔”など)の全体の成果に村し、「しんたろうのまじっくNo.25」(和洋共に改良制作された種々の作品)の成果に、「神田山裕ひとり会」(“天明白波伝”“徳川天一坊伝”)の講談としての話芸に、「春日井梅光・名調子への挑戟」(“瞼の母”“天野屋利兵衛”)の浪曲公演の成果の5公演が入賞と決定した。

あと1公演を、「江戸文字噺・橘右近の会」と「江戸東京博物館金曜シアター特別公演、第5回寄席21世紀〜落語春夏秋冬」「宗田千恵子の語・演・歌」の3公演が候補に上がり、この中から1公演を入賞させるべく、時間をかけて討議を重ねたが、いま一つ前記5公演に比べて欠けるものがあり、次回の開花を待とうということで今年度は入賞を見送った。

(芝 清之氏・芸術祭演芸部門審査委員)

〈賞と芸〉

平成7年5月26日三越名人会45周年記念特別企画

平成6年度芸術選奨・芸術祭賞受賞者による「旬の芸」(柳貴家正楽社中出演)パンフレットから抜粋

賞を受けるということは芸が評価された証しなのだ。どの芸が高く評価されるのかは選者の見識にかかっている。近ごろは「見識」が疎略にされている風潮があるが、芸の良し悪しを判断することは特に大切だ。

中世、能の芸談「風姿花伝」の中で、世阿弥はしきりに「目利き・目利かず」という言葉を使っている。目利きが鑑定する良い芸がすなわち見識ということになる。
  最高の芸とは、年齢が高いとか経験が豊富だということでは決まらない。若くしても十分な芸の体得者もいる。今回の出演者は比較的働き盛りの年配である。芸の瑞々しさが舞台にあふれるのではないかと、楽しみである。

(藤田 洋氏・三越名人会企画委員)